俺とジェイドは小学生に上がる前からの付き合い、所謂幼馴染みだ。

初めて会ったのは確か5歳ぐらいの時。近所に越して来たとかで挨拶をしに来たのがジェイドとジェイドの母親だった。なんとはなしに顔を覗かせると、母親の後ろに隠れるように立つ少女と目が合った。
透き通るような白い肌、子供特有のぷっくりとした頬は恥ずかしさからかほのかに色づいていて、白いワンピースから覗く細い腕と足、そしてなによりも印象的だったのは、その紅い瞳だった。
多分一目惚れだった。ジェイド(その時は名前を知らなかったが)と目が合うと、少女の頬がぱっと朱く染まった後、すぐに逸らされてしまった。

お互い何かしら感じるところはあった。幼稚園は違う所に行っていたので、再開したのは小学校の入学式だった。まあ、近所を歩いていて擦れ違う、くらいの事は何度かあったわけだが(ちなみに母親同士は仲が良かった)。
俺は歳の割にはませた子供だった。淡い恋心は消えないままで、式とクラス発表が終わり、人込みに消えていこうとするジェイドの腕を掴んで引き寄せた。くりくりとした大きな目を見開いて見上げてくるのが可愛くて、息が詰まりそうになったのを覚えている。掴んだ手を引いて、人気の無い校舎裏へと連れ出すと、ジェイドは不安そうな顔をして「なあに?」と問いかけた。
俺が「すきだ」と言うと、ジェイドは再び零れ落ちそうなほどに目を見開いて、俺を見つめていた。今思うと我ながら唐突だと思う。ろくに話したこともないのに強引に連れ出して告白だなんて。まあ、今もあまり変わっていないわけだが。
とにかく、俺はジェイドをじっと見つめていた。ようやく衝撃から解かれたジェイドが顔を真っ赤にさせて俯いてもずっと見つめていた。しばらくするとちらりと視線が寄越され、小さく頷いたように思えた。それほど小さな動きであったため、俺は確信が持てなかった。
小さな手をきゅ、と握ると、俺より少し体温の低い手で握り返された。桃色の可愛らしい唇が「わたしも」と小さく紡ぐのをはっきりと聞き取った。

それからは暇さえあればふたり一緒にいた。クラスは違っていたが、学校内で擦れ違えば微笑みかけ、宿題が出されればどちらかの家で、小さな机を囲んで鉛筆を走らせていた。勿論親同伴だが、旅行にも行った。手を繋いで歩いて笑い合って何度も何度もすきだと囁き合った。
あれは多分、同じ年の夏休みの事だった。母親が買い物で留守にしており、家には俺と遊びに来ていたジェイドのふたりきりだった。最初は他愛もない話をしながらジュースを飲んで宿題をやっていたのだが、だんだんと落ち着かなくなっていった。俺はませた子供だった。好きな女の子と部屋でふたりきりという状況が頭の中をぐるぐると巡り、その衝動のまま行動にうつってしまった。
正座を崩して座るジェイドの小さな手に掌を重ねて、身体を寄せた。つまるところ、キスをしたのだ。顔も傾けず、唇に唇を寄せるだけの拙いキスをした。しばらくの間時が止まったかのように動かなかった、動けなかった。息が苦しくなって顔を離すと、俺もジェイドも照れたように顔を逸らした。 そうしてもう一度キスをした。

それから、ふたりきりになるとキスをするようになった。手を繋いで目を閉じて唇を合わせるだけで、ひとつになれた気がして嬉しかった。
そんな事を繰り返していたある日、俺は『キス以上の事』を知る。色々と足りない知識ではあったが、知った以上実践したくなるのが子供である。多分、11歳…5年生ぐらいの、これまた夏休みの事だった。
俺はいつものように遊びに来ていたジェイドにキスをすると、繋いでいた指先を離し、細い足に触れた。ジェイドは頭上に疑問符を浮かべながら不思議そうに俺を見ていた。

「ジェイドは、おれがすき?」
問い掛けるとこくりと頷く。

「おれとキスするのはすき?」
恥ずかしそうにしながらも、再び頷く。

「じゃあ、」
言いながらそっと掌をワンピースの下に隠れる太腿へと滑らせると、ジェイドは驚いたように顔を上げ、俺を見た。

「キスよりもっといっしょになりたいと思う?」

からん、と氷の溶ける音と共に、ジェイドは小さく頷いた。





小さな身体をぴくりと揺らして、ジェイドは俺を見ていた。手順はよくわからなかったが、何時もよりこころもち熱い掌を、暑さと緊張でしっとり汗ばむジェイドの肌に滑らせていた。水色のワンピースは、背中のファスナーを下ろして、腰の辺りまで脱げかけている。その日、ジェイドは上に下着を着けてはいなかった。暑かったからなのか、普段からそうなのかは知らないが、服を脱がすと白い肌と、まだほとんどふくらみのない胸、そして淡く色づく突起が目に入った。
不安そうなジェイドに優しくキスをして、掌をほぼ平坦な胸へと滑らせる。びくん、とジェイドの肩が揺れて、何かを言おうと口を開きかけた。拒絶が怖くてその唇を塞ぐと、ひらいた唇の中で舌が触れ合い、背筋が痺れた。ぱ、と唇を離してまじまじと見つめ合う。やがてジェイドが閉じていた唇を開き、可愛い舌を覗かせた。俺もジェイドも、あの電撃の走るような刺激が欲しくて再び舌を触れ合わせる。陥落はあっという間だった。

ちゅく、と、水音がやけに頭に響いていた。ひらいた唇に触れ、舌を何度も擦り合わせて得体の知れない熱に酔いしれる。舌の腹にあるざりざりとした部分が俺の同じ場所に当たる度、びくりびくりと背筋が震えた。知れずに声が漏れ、唾液が顎を伝ってジェイドの白い胸元を濡らしていた。まだ嬌声とは言えない吐息は、俺を煽るには十分だった。
そろりと、口付けに夢中で忘れていた掌を再び胸へと触れさせる。キスで頭がいっぱいなのか、ジェイドは抵抗しない。するすると撫で上げ、かたくなった尖りを指で弄る。

「っあ…、」

上がった声に気を良くし、摘んで捏ねて押し潰すと、ジェイドがいやいやするように頭を振った。指と唇を離して「きもちいい?」と問い掛けると、ジェイドはとろけた眼で俺を見た。が、


「ただいまー」

と言う声と、階下の扉が開く音に背筋が凍った。一応イケナイ事という自覚はあったのか、ジェイドが慌てて服を着直す。俺が背中のファスナーを上げるのと、母親が扉を開くのは同時だった。

「シュークリーム買ってきたけど食べ……、どうしたの?顔が赤いけれど」
「い、いやっ、その、あ…暑くて!クーラーつけてもいいっ…?」
「え、つけてなかったの?」
「あ、ああ、うん」
「ふうん…変な子。」

母親は訝しげな顔をしたまま、ぱたん、と扉を閉めた。語尾が妙に上がったりと、我ながら下手くそな嘘ではあったが、まさかまだ小学生である自分の子供が、同い年の少女とえっちな事をしていたとは思うはずも無い。ほっと胸を撫で下ろし、ジェイドを見ると、彼女も同じように安堵していた。
視線が合い、俺は苦笑する。ジェイドも困ったように笑い、放置していて温くなったジュースを一口飲んだ。


結局その後に続きをすることもなく、キスの回数もだんだんと減って行った。お互い、幼い頃のように無邪気に触れ合うようには行かなくなり、中学3年で俺が再び告白するまで距離を置くようになる。
待ち望んだ指先が、彼女の肌に触れるのはそれからまた少し後の事だ。

まあ、それはまた別の機会に話すことにでもする。






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現代幼少ってもえるよねって話^p^
ほんとははじめてまで書くつもりだったけど案の定飽きました。


090224